歯科医療の未来を語る懇談会

歯科技工士法

第5章 歯科技工所

歯科技工士法(昭和30年8月16日法律168号)に於いては、歯科技工所の備えるべき構造設備や機材等については、明確な内容についての記述はなされていない。
しかしながら以下のように改善命令として第24条が規定されていることは事実である。
(改善命令) 第24条 都道府県知事は、歯科技工所の構造設備が不完全であつて、当該歯科技工所で作成し、修理し、又は加工される補てつ物、充てん物又は矯正装置が衛生上有害なものとなるおそれがあると認めるときは、その開設者に対し、相当の期間を定めて、その構造設備を改善すべき旨を命ずることができる。
では、ここで言う歯科技工所の求められる設備や構造とはどんなものなのであろうか。 
と言うか、何を基準にここがダメ、これが足り無いというのかが、歯科技工士法には抜け落ちているのである。
そもそもの基準が示されないままに、第24条は設けられたものだといえる。
本来、この構造基準、歯科技工所の構造が備えるべき設備について明確な基準や内容について、法成立後に早急な立法化や明文化が求められるべきだったのだと思われるが、歯科技工士法自体に構造設備に関する条文の追加はなされておらず、構造設備に関する明快な条文も存在しない以上は、歯科技工所の構造について法改正を求めるべくもなく、現在に至っているのである。

日技は本来、この問題について立法化を働きかけてきたのだと思うが、構造設備問題以前に大臣免許や料金問題に労力を割かれ、その間にも歯科技工所の乱立や組織率の低下から長く、構造設備に関する課題は放置されてきたように思う。


第24条で構造設備の改善を命ずることが出来ると法律にありながら、命ずるところの確かな根拠を持たず、第24条に関する罰則も規定されていない。
それが、平成17年3月18日医政発第0318003号「歯科技工所の設備構造基準及び歯科技工所における歯科補綴物等の作成等及び品質管理指針なる厚労省医政局長通達に於いて、国が求める構造基準だけではなく、品質管理指針も合わせて示されたわけである。
その内容については、厚労省単独ではなく、むしろ日技側の働きかけが強かったと思われるのであるが。

長年に渡って放置されてきたように思える第24条にある構造設備について、何故厚労省は平成17年になって立法化を待たず、通知通達での規制を打ち出してきたのだろうか。
そしてそれは、どれほどの法的拘束力を持ち、強制されるべき義務なのであろうか。
そもそも義務以前に、我々歯科技工士は歯科技工業務を行う上で、最低限必要な設備や機材というものは揃えるものであるし、それが揃わなければ業務自体が困難であることは自明の理である。
厚生労働省が歯科技工所の構造設備について、17年通達のような通達を出すのであれば、その前提として立法府は第24条にある構造設備なる文言にたいする整合性ある条文や附則を加えるよう試みるべきだと思うし、現実には罰則も存在しないようなので、この通知にどれだけの実効性が持たれているのか疑問ではある。

医政局通知に見られる文言の変化

今回の厚労省の通知では、4頁の最下段に写真で示す文言が見られる。
「2. 国内の歯科技工所は−−−−−−平成17年3月18日付け医政局長通知において、 歯科技工録の作成が義務づけられている」
となっているが、平成17年通知(医政発第0318003平成17年3月18日)は、「関係者に周知方をお願いする」というものであって、 強制的ものではなく、立法化されたものでない。


したがって、現状において、歯科技工所の技工録の義務化はありえない。 今回の通達に反論しないと、国内全ての技工所が法律上の裏付けを伴わない大変な義務を負わされることになり、 大問題であると思われる。私達は、強く反論する。
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